問われるのは、闘う理由。

―羽生名人、シリーズを振り返ってください。

「内容的にも悪い将棋が多かったので、仕方がないかなというところです」

―3局目までは2勝1敗とリードされていました。4局目から何か変わったのでしょうか。

「ちょっと何か、積極的に攻めすぎてしまったのかもしれないですね」

終局直後のインタビューより

名人に切れ無し。。王将戦/第6局「郷田王将、圧勝で初防衛達成!」

【 投了図・102手目△8三角 】

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本日、決着をみました
注目の第65期王将戦7番勝負/第6局は
上図102手までで後手・郷田王将が勝利。

この結果
今シリーズの対戦成績を4勝2敗とした
郷田王将が見事、タイトル初防衛を達しました。

地に足の着いた堂々たる戦いぶりで番勝負を制した
郷田王将には必然と説得力が溢れ、文句のつけようのない
充実の防衛劇に感じました。

それだけに、羽生名人の淡白さが目立つ結果にも。。

長年に渡り羽生名人のタイトル戦をみてきましたが
これほど粘りと覇気の感じられないシリーズは初めてです。

昨年の棋王戦では渡辺明棋王の前にストレート負けを喫し
森内俊之九段との名人戦などでも大敗を重ねることはありましたが
それらは全て、勝利への準備や気迫が空回りした上での結果であり
どこか散漫ささえ感じた今シリーズとは後味が全く異なります。

誰よりも一つの勝利に拘り
自分の後を追うものは息の根が止まるまで徹底的に叩きのめし
常にチャンピオンであること、頂点に君臨し続けることのみを
求め続けた羽生名人に、一体何が起こっているのか。。

「郷田王将からタイトルを奪ってやる」
いつもの殺気がなぜ、みられなかったのか。。

シリーズの大事な第1局とタイスコアで迎えた急所の第5局では
開幕直前まで海外に滞在するという異例のスケジュールを組んだのも
今にして思えば、王将戦へのモチベーションを少しでも上げるという
意味合いも含まれていたのかも。

感覚派で今を楽しみ、生きるタイプの羽生名人が
海外で王将戦の準備や研究をしていたとは到底、考え難く
むしろ頭を空にして、出来るだけサラの状態で対局に臨みたい。。
そしてそれが裏目に出た、というだけなら良いのですが。。

彼の強さの根源は、昔も今も変わらない。負けたら終わりなんだ、という強い気持ちですよ。島研は序盤の最新形を探る今の研究会とは違って、答えの出ない終盤しかやらなかった。地に這い蹲って手を拾う練習、泥臭く、みっともない勝ちを目指す練習です。どんなに情報やデータが大事でも、将棋は最後は根性じゃないですかね。彼は表に出しませんが、負けたら終わりという気持ちを根底に植えつけられている人ですよ。

(Number802 羽生善治42歳。「闘う理由」より。島朗九段のコメントを抜粋)

勝敗を越えたところで
将棋の真理、一手の意味を追求する。

そんな寝言は真の勝負師・羽生名人には通用しない。
勝利への意志が少しでも薄れた時が、羽生名人が終わる時。

一回り以上も年下の渡辺明竜王に死に物狂いで立ち向かい
強烈なカウンターパンチを食らいひっくり返されても、なお
竜王の足首にしがみつき、「勝つのは自分だ」と最後の最後まで
闘うことを止めなかった羽生名人の姿が今は懐かしい。

次の戦いの舞台は、名人戦。
若き挑戦者・佐藤天彦八段の役目は極めて大きく
一つはもちろん、羽生名人の本気を引き出せるかどうか。
そしてもう一つは、羽生名人の息の根を止めてしまうのか。

息の根を止められても、覚悟はもう出来ている。
ただ目を閉じれば、相手を殴り倒して生き残る羽生名人の
いつもの姿もまた鮮明に、まぶたの裏に浮かんできますが。。

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