【 投了図・98手目△3六桂 】
本日行なわれました
第30期竜王戦ランキング戦6組昇級者決定戦/1回戦
「加藤一二三九段-高野智史四段」は上図98手までで
後手・高野四段が勝利。
【 下図は58手目△9八香成 】
戦型は「相矢倉」
格調高く、双方玉を「矢倉囲い」の中へ入城させてから
いざ開戦となりましたが、あっさりと9筋の端を破られた
加藤九段は後手を踏む苦しい展開となりました。。
【 投了図・98手目△3六桂 】
上図の王手の局面をみて、加藤九段投了。
この瞬間、残された最後の公式棋戦で黒星を喫した
加藤九段の現役引退が決まりました。
終局後、感想戦は行なわず
またインタビューにも応じず、無言で将棋会館を後にした
加藤九段の姿からは、63年にも及んだ棋士人生の終焉に際し
万感迫るというよりも、この対局に負けたこ悔しさそのものを
強く感じました。まさか負けるとは思わなかったでしょうし。
ファンとしても
対局に負けた直後に、引退についてやこれまでの振り返りを
ピーチクパーチク喋りちぎる、加藤九段の姿は想像出来ないし
また見たくもなかったので、加藤九段らしい勝負師の矜持は
神武以来の天才にふさわしい幕引きとスッと胸に落ちました。
今さらいうまでもなく、加藤九段は神に選ばれた天才。
スポーツの世界はファンタジスタよりもアスリートが
文学や芸術の世界でもアーティストよりもアーティザンが
それぞれ幅を利かせる現代の風潮は、将棋界をも飲み込み
AⅠとの共存を必須として、これからは個性の確立どころか
個性そのものが、強くは求められない時代となるでしょう。
昭和の大棋士ではあるけれども、決してアナログの存在ではなかった
加藤九段の引退は年齢的には納得も納得ですが、貴重な個性を失った
その喪失感の大きさで言えば、本当に残念。
口には出さないものの、すでに多くの人が実感しているように
別にインターネットなんかなくても生きていけると気づきはじめた
一周回ったこれからの時代に、加藤九段の対局をみることが出来ない
その意味の大きさをこれから事ある事に嚙みしめることになるはず。