戦略の勝負、問われる価値観

棋聖戦/第3局「渡辺ニ冠完勝、タイトル奪取へ王手」

【 投了図・105手目▲5五飛 】

2019y06m30d_162441315

昨日、決着をみました
注目の第90期棋聖戦5番勝負/第3局は
上図105手までで、先手・渡辺ニ冠が勝利。

棋聖戦/第2局の棋譜中継はこちら

「矢倉」模様の出だしから、すぐに
渡辺ニ冠が変化し相居飛車の力戦模様へと誘導。
そのまま最後まで自分のペースを乱さず指し切り
見事な完勝でタイトル奪取へ王手をかけました。

番勝負をトータルで考え
一つの戦型に二つの作戦を用意して臨む渡辺ニ冠らしい
強かさと周到さがうかがえた第3局をみる限り、星勘定以上に
今シリーズの流れが渡辺ニ冠に傾いた印象が強く残ります。。

渡辺ニ冠のその合理的な思考と入念な事前研究は
「名人戦男」の異名を取った森内俊之九段を彷彿させますが
対照的に、豊島将之ニ冠は一戦必勝型の羽生善治九段の姿が
誰よりも重なってみえます。

常に全力投球であるがゆえに
高い勝率を毎年安定して残すも、大一番ではことごとく
相手に出し抜かれ、28歳になるまでタイトルには手が届かず。
誰もが認める次世代のエース候補筆頭が「無冠の帝王」に甘んじた
最大の要因はその勝負スタイルにあったと個人的には思えてなりません。

前期、ついにその殻を突き破りニ冠を獲得しましたが
奪った相手は羽生九段、菅井竜也王位(当時)といずれも
負けを恐れず真っ向勝負を挑む、自分と似たタイプでした。

かつて、羽生九段も名人戦で森内九段に苦戦を強いられたように
負け試合すらも計算づくに感じられる老獪な戦略家・渡辺ニ冠を相手に
番勝負で先行を許した状態から盛り返し、勝ち切るのは至難の業。。

我が世の春を謳歌する豊島棋聖にとっては試練の番勝負。
カド番に立たされた第4局が実に興味深く、また楽しみであります。

スポンサーリンク
konline
konline
  • このエントリーをはてなブックマークに追加